はじめに
200万円とか300万円とかどのくらいかな?
労働人口の減少に伴い、生産設備の自動化、機械化を外部の装置製作会社への依頼を検討される企業のご担当者様はたくさんいらっしゃると思います。ここでは、一般的に自社の生産内容に特化した特注の機械装置の導入を検討しているけれども、業者に見積依頼して打合せとか時間も掛かるし、営業も激しいし、予算を簡単に把握したいだけなので、まずはお値段がどのくらいなのかを知りたい。でもあまり適当だと後々面倒になるので妥当な価格が知りたい。という欲張りな要望にフォーカスし、それを導く為の考え方をお伝えしていきたいと思います。
まず、機械装置の値段は以下の式で成り立ちます。
装置価格 = 部品価格 + 人件費
経理的には違うとは思うのですが、機械装置の価格を考える際には購入する部品価格と人工で分けて愚直に加算していく事がベストという考え方です。
装置価格を事前に見積もる上で割と大きな差が出てくるのが人件費の部分です。習熟した分野ではその人件費はお安くなる傾向にあります。食品機械を専門としている装置製作会社ではエンジンの組立て装置を検討した際に人件費が高く見積もられるという事は容易に想像がつくのではないでしょうか。
分からないものについて取り組む事に対しては「時間が掛かる=お金が掛かる」という式が成り立つのでそこを理解しておきましょう。同じ部品を使っても会社によって得手不得手があり、価格が変動するので、依頼先の機械装置の製作実績をまずは確認する事が重要となります。
まずは簡単に把握したいんだけどな。
機械装置の価格を知る準備
様々な業種や工程で生産設備の自動化、機械化は求められていると思います。準備としては、当然ですが、どういった仕様の機械であるのかを明確にする作業が必要となります。
この作業を仕様書を作る作業であると定義します。とても重要なので、間違う事の少ない仕様書の作り方を次の記事でご提案していますので、製作する事が決定した場合はこちらを参考にしてみてください。
しかし、ここでは仕様書の作成は不要です。予算採りの様なフェーズなので、ざっと必要な項目をまとめるという程度で問題ないです。
機械装置なので、何をどうするを洗い出します。
例として「部品Aと部品Bをボルトで締結する装置」を考えてみます。人が部品AとBをセットした状態とするのか、ロボットが運ぶのか、完成品は人が取り出すのか、自動で箱詰めも行うのか、少し取出し易い様にリフトアップするのか等、洗い出す項目は比較的多いです。この点はどうしても価格を知る上では必須の項目なので、洗い出しを行ってください。
加えて、内部で求められる事は明確にしておきましょう。
例えば、自社では装置の安全性は徹底的に求められるので怪我の可能性を可能な限り排除したものとしなければならない。であったり、歩留まりを確実に管理したいので、そのデータを本社へ転送し外部からでも把握できるようなネットワークを構築したい。等様々です。先ほどの2例をみただけでも、ボルト締結装置であっても価格が大きく異なるという事は分かると思います。外部のどんなに経験豊富な営業・設計担当者でも貴社のルールは分からないのですから。
・機械装置は何をどうするのかをまとめる
・社内でしかわからない外部への要求事項をまとめる
機械装置の価格を知る(部品価格)
装置の価格を知るためには、部品価格の合計をまずは知る必要があります。
準備の際に洗い出した項目に必要と思われる部品の価格の合計を出してやるという単純かつ地道な方法が基本となります。ただ、必要な部品もわからないし、ましてやその価格も調べていたら時間がいくらあっても足らないと思うでしょう。
そこで、必要な部品の合計を出す為の概算価格ツールを作成しました。決して細か過ぎず、大雑把過ぎずをコンセプトに作成したものです。ツールといってもエクセルシートに価格のリストがあり、選択したものと数量を兎に角加算していくものです。
単価は一般的な価格を記入していますので、変更あれば各々で変更願います。単価が高い、安いについてはあくまで参考という事でご了承願います。このデータを更新してブラッシュアップしていく事が次回以降の財産となるはずです。
機械装置の価格を知る(人件費)
あれ、思っていたより安くない?!
部品の価格を積み重ねた後は、人的費用を積み重ねていきましょう。
製造業は時間単価で働いている企業が多く、その時間単価(チャージ・アワーレート)は様々です。一般的に大きな企業の方が時間単価は高い傾向にあり、その算出方法はちゃんとした人でないとよくわからないので、依頼先の単価はある程度の企業規模感でざっくりと推し量るのが良いでしょう。または見積項目で1日作業の費用がいくらかを確認してその価格÷8Hでざっくりと算出してみましょう。
だいたい4,000円~6,000円の間ではないかと個人的には思っていますが、企業の事情は様々なので、そうではないかもしれません。上記だと平日1日8H作業1名で32,000~48,000というところでしょうか。しかし実際10,000円の時間単価の会社というのは珍しくなくて昔からの慣習で1日の費用はあまりとれないのでその他で回収している。という事もあり得るので、簡単には言えないですし、貴社の時間単価はいくらですか?と聞いて回答してくれる企業は少ないと思います。原価を推し測られて足元見られるのもイヤですからね。
人件費のかかる項目リストは以下の通りです。概算価格ツールに時間単価と工数(H)を記入していってください。
機械設計費 | 承認図・組立図・部品図・員数表・配管系統図・メンテナンスマニュアル・取扱い説明書等 |
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電気設計費(ハード) | 承認図・制御盤組立図・員数表・配線図 |
電気設計費(ソフト) | ラダー図・タッチパネル画面設計 |
装置組立費 | 装置組立、エア配管 |
機体配線費 | 電気機器の配線・制御盤・タッチパネル設置・中継ボックス取付・入出力チェック |
制御盤組立費 | 制御盤 |
試運転、調整費 | 試運転・機械調整 |
運搬費 | 装置運搬 |
据付費 | 荷下・横引・設置・試運転調整 |
まとめ
ダウンロードして頂いた、概算価格ツールを貴社の環境に合わせて変えていけば良い塩梅のツールにできるという感触は得られましたでしょうか。とにかく早く価格を出したい場合は使えるものではなかったでしょうか。仕様を細かく詰めて更に精度を高める事がすれば妥当な価格を把握できて、複数社の価格を比較した際も何が原因で高額、安価となっているのかどこの項目が高いのか、どの点に優位性をもっている企業であるのかなど企業分析にも使えるようになるかもしれません。
次からは簡単に概算算出できそうね。