基本情報

【奥の手】エキゾースト弁の使い方と効果【急速排気弁】

1. エキゾースト弁とは?

エキゾースト弁(急速排気弁)は、エアシリンダーから出る排気を直接大気に逃がすためのバルブです。通常、シリンダーの排気は配管を通って方向切換弁(電磁弁)を経由してから外へ出ますが、この配管や弁の通路が抵抗になって背圧が発生します。

背圧があると…

  • シリンダーのピストン戻りが遅くなる
  • 軽負荷でも動きがもたつく
  • スピコンを全開にしても限界がある

こうした状況で役立つのがエキゾースト弁です。

■ 通常のスピコンとの違い

項目スピコン(メータアウト)エキゾースト弁
排気経路電磁弁経由で排気シリンダー近くで直接排気
背圧発生しやすい発生しにくい
調整機能排気速度の調整が可能基本は調整せず開放(タイプにより調整可)
主な目的速度調整高速化・背圧低減

2. 構造と動作の原理

■ 通常の配管で発生する背圧

  1. シリンダーのピストンが動く
  2. 排気が配管を通って方向切換弁まで流れる
  3. 弁内部の流路や配管抵抗で空気の抜けが悪くなる
  4. シリンダー内に圧力(背圧)が残り、動きが遅くなる

■ エキゾースト弁の排気ルート

エキゾースト弁はシリンダーのポート近くに取り付け、排気を即座に外へ逃がす構造です。
これにより、背圧の溜まりを最小限に抑えられます

■ 排気の流路を短くする効果

  • 配管距離が短い=排気抵抗が小さい
  • 弁内部も大口径で抜けが良い
  • 排気が一気に抜けるため、ピストンが勢いよく動く


3. どんな場面で使うべきか

■ ① 戻り動作を高速化したいとき

  • 軽負荷での戻し動作
  • 生産サイクル短縮が必要な場合
  • 検査装置のワーク排出など

■ ② 背圧が不都合な工程

背圧によって部品が押され続けると、不具合や傷が発生する場合があります。
例:組立工程で部品が余計に押し込まれてしまう

■ ③ スピコン調整では限界がある場合

スピコンを全開にしてもスピードが上がらない=背圧による制限が大きいとき、エキゾースト弁が有効です。


4. 使うときの注意点と失敗例

■ 排気音が大きくなる

空気を一気に排出するため、「プシュー」という音が大きくなります。
(実はプシューどころじゃない。めっちゃうるさいです)
→ 消音機能付きエキゾースト弁やサイレンサの併用が有効。

■ エアの逆流防止と粉塵対策

直接大気に開放するため、外部から粉塵や油分が逆流する恐れがあります。
→ フィルタ付きやダストカバー付きタイプを使用。

■ 全行程でなく片道だけ速くしたい場合

エキゾースト弁を取り付けるのは速くしたい側のポートだけです。
両方に付けると、全行程が高速になり制御しづらくなる場合があります。


5. まとめ|エキゾースト弁は「高速化の最終兵器」

エキゾースト弁は、スピコンや配管改善でもスピードが頭打ちになったときの有効な選択肢です。

✔ 背圧を最小限にして高速動作が可能
✔ シリンダーの戻し工程や軽負荷工程に最適
✔ 排気音・粉塵対策は忘れずに

「あと少しスピードを上げたい…」
そんなとき、エキゾースト弁は小さな部品で大きな効果を発揮します。

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