ロボット

【協働ロボットとは】産業用ロボットとの違い、導入例、問題点を解説【基本】

はじめに

協働ロボットって最近良く聞く。でもよくわかっていない。という方に向けて基本的な解説をします。製造業に携わる方で協働ロボットについてよくわからない。という方はこの記事を何度も読んで理解して頂く事をおすすめします。

基本的にはここで言う協働ロボットは6軸ロボットになります。

本稿一番のポイントは、協働ロボットは基本的に産業用ロボットの置き換えとして検討するものではなく、人の作業の置き換えとして考える事がベストである。という考え方を理解して頂く事です。

協働ロボットとは

協働ロボットとは、人と共に作業を行うことを目的としたロボットのことです。協働ロボットは、安全柵なしで人間と同じ作業エリアで動作できるように設計されています。

協働ロボットの特徴は、力や速度を制御し、人との接触時に危険を回避する安全機能を備えていることです。また、作業の柔軟性が高く、製造ラインの変更や人手不足への対応ができる為、注目をされています。

ISO/TS 15066といった国際規格に基づいて、人間との協働を前提とした安全基準が定められており、具体的には力の制限や、速度・距離の監視などが含まれます。

協働ロボットは、小型の部品組み立てや検査作業、繰り返し作業など、多様な業務に柔軟に対応できるため、製造業をはじめとする多くの分野で導入が進んでいます。

産業用ロボットとは

産業用ロボットとは、工場や製造現場で繰り返しの作業や精密な動作を自動的に行うことができる機械のことです。産業用ロボットは、労働力を補完し、生産性の向上や作業の効率化を目指して導入されることが一般的です。

産業用ロボットは、溶接や組み立て、塗装、検査、搬送など、幅広い作業を正確かつ迅速に行えるように設計されています。

通常、産業用ロボットは、PLC等によって動作が指示され、人間と同じ作業エリアで作業することは少なく、安全柵で囲まれた専用のエリア内で動作します。これは、作業中に高速かつ強力な動作を行うため、人間にとって危険だからです。

産業用ロボットにはISO 10218-1やISO 10218-2といった国際規格が設けられており、安全な運用を実現するための要件が定められています。

産業用ロボットは、大量生産が求められる自動車産業や電子機器製造業などで広く活用されており、その導入により作業効率の向上とコスト削減が実現されています。

協働ロボットと産業用ロボットの主な違い

協働ロボットは人と共に作業を行うことを目的としたロボットと書いたのが大きな違いであるように、そもそもの設計構想が産業用ロボットとは異なります。

そのため、6軸をもった同じ様な機械構造であるにも関わらず、使用用途は基本的に全く異なる。という認識を持って頂く事がまずは重要だと考えます。

よくご意見頂くのが「産業用ロボットでいいじゃん。」とか「協働ロボットは産業用ロボットより高額だし代わりにならないよ。」というお話ですが、そもそものコンセプトが違うので違いを比較するのはナンセンスじゃないか。というのは私の考えです。

ただ、違いを知識として知っておく。というのは重要なので簡単に表にしてみました。

協働ロボット産業用ロボット
価格高い安い
スピード遅い早い
繰返し精度同じ同じ
重量軽い重い
可搬重量最大50㎏位(現状)最大1t以上もある

どうでしょうか。こんな感じで比較すると、圧倒的に産業用ロボットでいいな。ってなりますよね。これが世間で良く起こっている感情だと私は思っています。

協働ロボットの具体的導入例

どういった場所で協働ロボットを使うのか。について解説します。具体例を2つ紹介します。

マシンテンディング

マシンテンディングとは機械の操作補助や材料の供給、加工後の製品の取り出しなど、製造工程における機械の自動化サポートを指す作業です。

つまり今現在人が行っている機械への作業を自動化する。という事です。例えば加工装置へのワーク投入、取出し、検査、箱詰めという現在人が行っている一連を自動化する事が可能です。


ねじ締作業

組立工程におけるインパクトドライバーを使ったねじ締工程。これは作業者に対して大きな身体的な負担を与える工程でもあります。ここを自動化し、且つ組立ラインの他の細かい人でしかできない作業は人が行う。といった共存が可能となります。

協働ロボットの問題点

一方で協働ロボットを製造現場へ展開する為の問題点も多いのも現実です。ただ、クリアしている事で今後協働ロボットが製造現場に当たり前に存在する事になると私は考えています。

安全性

製造現場で協働ロボットの導入を阻止している最大の原因はこの安全性という問題です。安全柵を取り外すという判断を行うのは導入先企業の判断に委ねられています。

協働ロボットは適正なリスクアセスメントの後に、安全柵を取り外す事が可能となります。安全柵を取り外した協働ロボットと作業者の間で接触事故が発生した場合、そのリスクアセスメントが適正であったか。が問われる事となるのでどうしても慎重にならざるを得ないという所です。

特に日本では協働ロボットの稼働実績が無いと導入に積極的にはならない企業が多いかなと思います。逆に言うと、他の企業での実績が出来てくると現場への導入スピードはかなり加速すると思っています。

導入コスト

価格としては可搬重量と価格の間のコストを産業用ロボットと比較して高額となる。という点があります。しかし、この点は申し上げている通り、産業用ロボットとは比較しない。という事です。人と一緒に作業できるのは産業用ロボットにはできないので、価格を比較するのはナンセンスです。

協働ボットメーカー同士で価格を比較するのはもちろんアリですよね。個人的には協働ロボットとしての価格は下がっている傾向にあると思っています。

動作速度と可搬重量

人との接触時にけがをさせない事を実現するという事は単純に動作速度が遅い、可搬重量が小さい。は必然となってきます。人のすぐ横で猛スピードで動くことはできない事は想像できますよね。

どの程度の作業をどういったスピードで協働ロボットに行わせるか。についてはケースバイケースです。人がいない時はハイスピードで、人が近くにいるときは安全な速度で作業する事もできます。

製造現場への適応・調整

新しい価値の物を導入する事となる為、最初は現場とのやりとりが多く発生します。現場担当者も含めての教育、意思疎通が必要なのでそれなりに時間と費用が掛かります。

これらを初期費用に含めておく事、現場を含めて必要であるという認識が抜けていると後々問題に上げられる事となる可能性が高いです。

まとめ

遠くない未来に協働ロボットは製造現場に多く配置されるはずです。

問題点はまだまだ多いですがそれをクリアするだけのメリットはとても多いです。先行して導入した企業からたくさんの利益を出していく事例が多く出るはずなので、きっと安全がー、実績がーとか言っている偉い人達も手のひらを反すはずです。

導入には最初から申し上げている通り、産業用ロボットと比較されるものではない。という点を理解してもらえると、様々な問題点の解決が見えてくると思います。

ここで色々と勉強して少しでも製造業の現場が良くなる未来を描くための一助として頂ければ幸いです。

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