2025年の国際ロボット展(iREX)に参加しました。最新技術の熱気もすごかった。
そんな中、日本のロボットの転換点があるのではないかなと感じていました。
本レポートではFA現場営業歴20年の筆者と元トヨタ系Tear1の弊社技術担当が一緒に参加した国際ロボット展で感じたことをまとめていきます。

「ロボット✖️AI時代」を迎えつつあるが

まず最初に感じたのは、国内ロボット業界全体とAIってうまくやれてなくね?という点でした。強く意識しているのはわかるのだけれども、AIという単語を使っているだけ。感が否めないというのが個人的感想です。まだ確信を持ってその未来に向かって舵を切れていないということなんだと思いました。

ただiREX2025全体としての熱量は非常に高く、来場者も活気にあふれていたが、各展示から見えるAIへの向き合い方には企業ごとの差が大きく、業界としての方向性に揺らぎがとてもあった。

最近は日々の生活の中にまで入り込んでいる生成AIが作り出す驚きと感動を持ったアウトプットのあるロボットとの共演みたいなものを想像していたのに、そこに届かない展示が多かった気がする。

大手ロボットメーカーの感想

会場はいつものごとく盛り上がり、技術者・研究者・学生・ビジネス関係者が混在する熱気に満ちていました。

その雰囲気とは裏腹に、多くの展示では「AIを使っています」と説明されながらも、実際にはAIがロボット性能を大きく底上げしているとは言い難く、むしろ“AIを無理に当てはめている”印象すらあったのです。

国内大手のFANUCや安川電機の展示は、外見こそ華やかで迫力はあるものの、ロボットの未来像を示すような革新性は控えめだった。(少なくとも我々二人はそう思った。)

インターネットの情報ではAIによる自律制御・ティーチングレス化が加速しているが、国内ではいまだに「AIを使わない技術こそが正統派」という空気が根強いようにも感じたし実際そういったメーカーの人の発言もあった。そこは確実性を重んじる風土に準じているとも思うけれども、ネガティブな自分は世界に置いて行かれてしまって儲からなくなっちゃうんじゃないか。と思ってしまう。

AIが進むとティーチングや導入支援といった従来の収益源が縮小する可能性があり、メーカー側としても簡単には方向転換できない事情があるんじゃないか。なんて訝しんでしまったりします。

よく言われる「イノベーションのジレンマ」にFANUC、安川電機がハマってしまっていないことを祈るばかりです。破壊的イノベーションがせめて日本のメーカーであることも併せて期待したいですね。

日本の存在感と将来への不安

具体的にブースを巡っていると、本当によく見る展示のオンパレードでした。2年に1度の展示会と色んなところで開催されている展示会の違いがほとんどなかったと思いました。私が特別感を求めすぎた、期待値が高すぎたのもあるとは思いますが。

AIを前面に押し出した展示は確かに増えているものの、深層学習や強化学習を本格的に活用したロボットは少数派だった。「AI的な雰囲気」をまとうだけの展示も多く、技術の本質的な進化を感じにくい場面もあった。

また個人的にもっとも寂しさを感じたのが、国内メーカーによるヒューマノイドロボットの存在感の薄さですね。世界的にはヒューマノイドの開発競争が激化しており、海外企業は「労働人口の代替」という明確な目的を掲げて開発を進めている。

しかし、日本勢はその潮流に乗り切れておらず、世界に向けた強いメッセージ性を持つ展示がほとんど見られなかった。海外市場は見てないんでしょうね。

この状況を見て、私はロボット産業が半導体産業と同じ運命を辿るのではないかという勝手な妄想をしてしまった。かつて日本が世界をリードした半導体は、気がつけば主導権が海外へ移り、産業構造は大きく変化してしまった。
ロボット産業でも同様に、AIを本気で取り入れられなければ、日本の強みが徐々に失われていく可能性があるんじゃないかなぁと勝手に未来を憂いでいたのです。

未来のロボット像

今回のiREXは、国内ロボット産業の現在地を知るうえで非常に象徴的なイベントでした。

強烈な熱気と、新時代への期待が渦巻く一方で、AIという避けて通れない技術革新に対し、国内企業がどれだけ本気で向き合えているのかという問いが突きつけられていたように個人的には感じながら参加したのでした。

ロボットがAIによってより賢くなり、ティーチングレスで動作学習を行う未来は必ず到来すると思っています。むしろ、その流れはすでに世界では加速している。

日本の企業がこの変化を“進化の必然”として受け入れ、どれだけ早く方向転換できるかが、今後の競争力を大きく左右すると思う。

私は今回の展示会を通して生まれた期待と不安の両方を胸に、国内ロボット産業が再び世界の中心へ返り咲くことを願っている。