「協働ロボットを買ったけど、結局使っていない」

製造業の現場を営業として従事している私は、こういった声を何度か目にしています。
協働ロボットの市場は拡大の一途をたどり、中小製造業でも導入事例が増えている。
一方では、せっかく導入したロボットが稼働せずに置物になっているケースが実際にあります。

なぜ失敗するのか。そして、どうすれば失敗を防げるのか。
そもそも何が失敗で、これからどうすれば良いのか。
営業として実際に現場で見聞きしてきた経験をもとに、率直に書いてみます。

もしあなたの会社でうまく使えていない協働ロボットがある場合はこの記事を読んでみてほしい。

そもそも「なぜ買ったのか」が曖昧なまま導入している

導入がうまくいっていない現場でありがちなのは、購入の動機が曖昧なこと。

よくあるのが次の2パターン。

パターン1 余った予算で買う

期末に予算が余り、「何か買っておこう」という流れで協働ロボットを購入するケース。
設備投資の節税効果を狙うこと自体は合理的だが、
「何のために使うか」が後回しになったまま購入すると、現場に置かれたまま誰も触らない状態になりやすい。

パターン2 社長が付き合いで勢いで買う

現場の担当者を介さず、社長判断で購入が決まるケース。
トップダウンで導入が決定すると、現場は「使う気がないのに押し付けられた」という感覚になりやすく、結果としてロボットが稼働しないまま放置されることがある。

私の経験としては実際に仲の良いお客様が突然、協働ロボットを導入していました。

全然そんな素振りなかったのに、トップ営業とか銀行関係の付き合いで今ならお安く。みたいな形で購入されていました。

実際にその会社では保全の倉庫で何回か動かしてみて文字通りお蔵入りしていました。その会社での実際使用するまでをお手伝いしたのはまた後で説明します。

社内の受け入れ体制が整っていない

ロボットを導入しても、社内に使いこなせる人間がいなければ意味がない。

特に問題になるのが、保全部門や生産技術部門が十分に機能していない会社だ。
協働ロボットは産業用ロボットと比べてティーチングが簡単とはいわれるが、
それでも基本的な操作・プログラム変更・トラブル対応には一定の知識が必要になる。

「止まったらどうするんですか?」という質問は、商談の場で必ずといっていいほど出てくる。

これは単なる不安ではなく、現場がサポート体制の薄さをわかっているから出てくる質問だ。

メーカーのサポートや代理店のフォローに頼り切りで、社内に知見を持つ人間がいない状態では、ロボットが少しでも不具合を起こした瞬間に「使えないもの」として扱われてしまう。

目的を明確にすることがとても大切です。

弊社で実施しているのは、お客様がロボットの特別教育講習に参加することへのサポートです。一から学ぶことはやはり動機づけとしてもとても効果があります。

メーカーや専門機関が定期的に開催しており、実機に触れながら基礎から学ぶことができる。「自分たちで触れる」という感覚を持った社員がいるだけで、現場の受け入れ度合いが大きく変わります。

安全対策を軽く見ている

協働ロボットの大きな特徴は「安全柵なしで人と同じ空間で働ける」ことだ。
しかしこれは「安全対策が不要」という意味では決してない。

特に私の関わる自動車関連の製造現場では、安全基準への要求が非常に厳しく、
リスクアセスメントの実施、緊急停止の設計、作業エリアの区画など、
導入前に徹底した安全設計が求められる。

「安全柵がいらないから手軽に使える」というイメージで導入を進めて安全部門から袋叩きにあって結局、協働ロボットが安全柵の中で動くハメになります。すると「協働ロボットって高いくせに動きも遅いし使えねぇ」っていう失敗例がたくさんできていくわけです。

業界によって安全要求のレベルは異なるが、
「協働ロボット=安全は自動でクリア」という思い込みは危険。

業界によって「高い」の基準が違う

協働ロボットの価格帯は、本体だけで数百万円、周辺システムやSIer(システムインテグレーター)費用を含めると1,000万円を超えることは普通の金銭感覚です。

ここで見落とされがちなのが、業界によって設備投資の感覚が全く違うということだ。

自動車関連や大手サプライヤーでは、数百万円規模の設備投資は稟議が通りやすい。
一方で、業界や会社の規模によっては「100万円でも高い」という反応が返ってくることがある。

予算感が合わない状態でいくら提案を重ねても前に進まない。
導入検討の初期段階で、客先の設備投資の相場感と稟議フローを把握しておくことが重要だ。

ここでとても大切なのは以下の2点です。

  • 値下げは最終手段
  • 補助金利用を検討

値下げは最終手段

少し話はそれますが、値段で機能を決める事は基本的にはしないほうが良い。

叶えたい未来があってこその設備投資です。まずは仕様、要件定義をしっかり決める事が先決です。出来ることの大小を問わずこれは必ず守られるべき事であると私は思っています。

金額ありきで進むから本当に達成したいことが達成できずにうまくいかない案件となってしまいます。もちろん営業担当として売上達成のために値下げをして数多くの機械装置を受注してきました。

その結果として満足度の低い製品を顧客へ提供してしまう結果となってしまったのは紛れもない事実です。

綺麗事かもしれませんが、信頼を積み上げたいのであれば、製品に自信があるのであれば、見積もりに自信があるのであれば、決して値下げはしない方が良いです。

補助金利用を検討

とはいえ無い袖は振れないし、どうにか受注するためには。

顧客も前向きであるならば補助金を検討することは悪い手段では無いはずです。中小企業庁、地方自治体、さまざまな補助金を少し調べるだけで利用できるはずです。

最大50%なんていうものも少なく無いです。

まずはインターネットやAIを使って調査してみてください。きっと使えそうな補助金があるはずです。

仕様とゴールを最初に決めていない

導入後にトラブルになる案件の多くは、最初の仕様決めが曖昧なことが原因です。

「とりあえず自動化したい」という漠然とした目的のまま進めると、
導入後に「思っていたのと違う」「この工程には向いていなかった」という話になりやすい。

私が現場で実践してきたのは、客先からの仕様書がない場合では、装置製作側で仕様書を作って提示するというやり方だ。

  • 何の工程を自動化したいのか
  • 現在の作業時間・人数・不良率はどのくらいか
  • 導入後にどんな状態になっていれば成功といえるか
  • メンテナンス・段取り替えは誰がどのように行うか

これらを文書化して先方と合意しておくことで、導入後の「こんなはずじゃなかった」を大幅に減らせる。

とにかく、仕様書がない客先の場合は危ないプロジェクトになりやすい。そんな場合はまずは製作側がポジションを取ることが肝要です。

制作側が仕様を提示する。これに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
仕様は使う側が作る。だって自社の事なんだから自社で仕様を作るべき。

というスタンスだからうまくいかない。という事につながります。

顧客は自分の事を全くわかっていない。くらいの前提で話をするべきなのです。
このスタンスは(顧客を選べば)大きな差別化になります。

まとめ:失敗しない協働ロボット導入のチェックリスト

  • 「なぜ買うのか」導入目的を現場を巻き込んで明確にする
  • 保全・生技の体制を確認し、社内に使える人材を育てる
  • 導入前に若手社員とロボット特別教育講習に参加する
  • 安全対策はリスクアセスメントから丁寧に設計する
  • 客先の予算感・稟議フローを初期段階で把握する
  • 仕様書は客先任せにせず、こちらから提示する
  • メーカー選定はカタログスペックだけでなく使用環境で判断する

協働ロボットは、中小製造業の現場を大きく変える力を持っている。
失敗するかどうかは、ロボット自体の性能よりも導入前の準備と社内体制で決まる。
この記事が、導入を検討している方の一助になれば幸いです。